「丁寧な暮らし」という言葉が好きじゃなくて

「丁寧な暮らし」という言葉が好きじゃなくて
「丁寧な暮らし」という言葉がずっと好きじゃなかった
 
丁寧に暮らすことなんて、とっくの昔に放棄した
丁寧な暮らしを送ることは自分にはできない
というか「しない」と決めていた
 
部屋が散らかっていても死なないし
台所に洗いものが溜まっていても死なない
そう、いつも判断基準は「死ななければ大丈夫」だった
 
家事を自ら放棄することで
限りある時間と体力を温存し
仕事の隙間にやりたいことをねじ込んできた
 
新型コロナウイルス感染症の流行がはじまって
外出の予定が全てなくなり
家にいる時間が長くなって
そこには思いのほか「暮らし」を楽しむ自分がいた
 
それはわたしが苦手な
「丁寧な暮らし」
そのものに見えた
 
 

 

 
最近ようやくその生活にしっくりくる言葉がわかった
 
わたしは「丁寧な暮らし」をしたいんじゃなくて
わたしは「日々をクリエイティブに生きたい」だけなんだった
 
わたしはファッションが好きなので
どんな服を着て、どんな靴を履くか、どんなアクセサリーやバッグを合わせるかを考え抜く
結果、自分にとってベストな服装で出かけられた日は最高に気持ち良い
 
振り返れば
その一つひとつはクリエイティブな選択
 
今は体力時間ともに余裕ができ
好きなものの選択に使える余白が増えて
その選択はファッションだけでなく
生活にどんどん広がっていっている
 

そしてそれがとても心地よい

 

 

 

 
自然光できれいに写真が撮れるように、ダイニングを移動した
夜に落ち着いた光の中で過ごせるように、ライトの配置を変更した
寝る前に心地よく眠りに落ちれるように、パジャマを新調した
ベランダでのんびりできるように、ウッドデッキパネルを注文した
花を買い、一番似合う花瓶を選んで、一番映える場所に飾った
 
放棄して数年たっていた「きちんと料理をする」自炊も、久々に再開した
 
家にある食材を想起しながら、メニューを考え帰路につく
感覚でほぼ適当に作り、時にはお気に入りだった料理本を引っ張り出して作る
好きで集めていた食器から、料理と気分にピッタリのものを選ぶ
食後にその日の気分に合わせて、好きな飲み物を作ってゆったりと過ごす
 
「自分がもっとも心地よく過ごす」ために
改善点を見つけては、次回はこうしたら良いかなー、とわくわく作り上げている
 
楽しい
ただひたすらに楽しい
 
別に誰に評価されるでもなく
ただただ自分が満足できるものを作り上げる
 
自分の中の「アーティスト」を満足させてあげてる
そんな生活を送っている
 
 
 

 

 
 
千利休は
「お茶を飲む」
だけなのに空間も茶器もこだわりまくった
 
一見、無駄に思えるようなところに
どれだけ自分の「好き」や「心地よさ」を追求していけるかが
生活の質を上げるのだとしみじみと思う
 
他人から見たら無駄とも思えるクリエイティブな選択が
生活を彩り、わたしの心を豊かにする
 
これはわたしが特別クリエイティブなんじゃなくて
ほとんどの人が気づいていないだけで、クリエイティブに生きている
 
着る服、食べる物、聴く音楽、歩く道、住む空間まで
自分にしかわからないこだわりを満足させる
クリエイティブな選択をどこかでしているはずだ
 

 

 
…ちなみにわたしは、相変わらず嫌いなことは「死なない」と考えて放棄している
 
キッチンの洗い物は、だいたい2日分まとめて洗うし
干して畳むのが苦手な洗濯は、外注をしている

書類を一時的にまとめた山が、部屋には点在している

やっぱりわたしの生活は「丁寧な暮らし」ではないと悟る
 
でもいいのだ
好きなところだけ
クリエイティブでいこう