自分で何でもできるより、誰にでも頼れる人生を

自分で何でもできるより、誰にでも頼れる人生を

いつしか誰にも頼れなくなっていた

「人に迷惑をかけないようにしなさい」

何でも自分でできるようにならなきゃいけない
ずっとそう思ってきた

「役に立つ人になるのよ」

役立てない自分はこの世に存在する価値がない
ずっとそう思ってきた

「自分より人の喜ぶことを優先しなさい」

例え自分が辛くても相手が喜ぶならそれでいい
ずっとそう思ってきた

「全てのことに感謝するのよ」

どんな嫌なことがあっても意味がある、感謝で受け止めねば
ずっとそう思ってきた





自分の幸せより常に他人の幸せを優先する教育をされてきた
それが行き着いた先が医師という仕事の選択だったのかもしれない

最初は患者さんの笑顔が本当に嬉しくて
先輩の医師たちの役に立てることが嬉しくて
少しずつ成長して自分でできることが増えるのが嬉しくて
本当にやりがいを感じていた

でもいつしか、周りの人の仕事も勝手に自分で背負いこんで
自分を犠牲にして利他へ尽くしすぎて、完全にバランスは崩壊していた

「人のためにやることで幸せな気持ちにならなきゃいけない」

心で芽生えた「本当は辛い」という気持ちを無視して
「感謝をせねば」という思考で上塗りしていた





そんな生活をしていたら
何もかも嫌になった

誰よりも遅くまで残って仕事をすることも
離婚で心がボロボロなのに笑顔で仕事をすることも
仕事で役立てていない自分には価値がないと思うことも

そう思ってから
一人で背負って仕事をするのをやめた

何かあったら声かけてと伝えて後輩を信頼し任せた
事務仕事もキャパ越えと素直に伝えて人員を増やしてもらった

自分では勇気がいる行動だったけど周りは意外と受け止めてくれた

少しずつだけど楽になった







考えと行動を変えてから数年たった今は
また一周まわって感謝ができるようになっている

「感謝せねば」昔のようなそんな気持ちは微塵もなく
心からじわーっとあふれ出る感謝の気持ちだ

なぜなら今のわたしは人に頼らないと何もできなくなったからだ
いつも周りのみんなに助けられて生きている

自分で何もできないことを自覚したからこそ
周りに心から感謝できるようになった

そしてあふれる感謝の気持ちから
自分でできることで何か役立てるならやりたいと心から思える




人に迷惑をかけない生き方よりも
人に役立つ生き方よりも
人の喜ぶことを優先する生き方よりも
人に頑張って感謝する生き方よりも

どんな時でも周りに頼れる生き方がいい

だからもし辛い人がいたら
もっと周りに頼っていいと思うよ
自分が思っているよりもまわりには優しい世界が広がっているよ